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身の毛もよだつ怖い税の話(その1)|個人事業主1年目に襲い掛かる住民税の恐怖

8月も終わりだというのにまだまだ暑い日が続きますね。
最近も熱帯夜で非常に寝苦しいです。

さて、今回はいつもと趣向を変えて、夏の暑い日が少しだけ涼しくなるような背筋がスッと寒くなるような、怖い話をしていきたいと思います。

あ、もちろん幽霊などの話じゃありません、税金の話です。

会社員から独立して個人事業主になると、今まで会社にしてもらっていた各種手続きを全て自分でしなくてはなりません。
中には、忘れていましたでは済まされないことがいくつか存在します。

今回は、そのうちの住民税の怖い話をしていきたいと思います。




  • 住民税滞納から差し押さえまでの恐怖
初めに、住民税を滞納~財産差し押さえまでの恐怖を1つずつざっくりとご紹介していきたいと思います。


忘れた頃にやってくる、3倍の住民税

会社員の住民税は特別徴収という徴収方法で、毎月の給与から住民税分を差し引く形で会社があなたに代わり納税しています。

しかし、個人事業主になると普通徴収という徴収方法に変わります。
送られてくる納付書に記載された金額を、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)市区町村に納付します。

この時に注意したいのが2点あります。
自分で納付を行わなければいけないこと、3ヶ月分をまとめて1回で納付しなければいけないこと、の2点です。

3ヶ月分がまとめて請求されるので予想外に高額になります。
準備をしておかないと、払おうにも払えなくて滞納してしまうという事態になりかねないので注意しましょう。



滞納者に届く赤紙の督促状

住民税を納付せずに、納付期限から20日が過ぎると督促状が送られてきます。
赤い明らかに危険な封筒です。(自治体により封筒は異なる場合があります)


払うべき金額は本来の住民税額に延滞金を上乗せした金額になっています。
この督促状が届いた時点で何としてもお金を用意して支払いましょう

それでも、未納のままだと数回に分けて督促状が送付されてきます。
これらを無視し続けると支払いの意思無しと判断され、さらに恐ろしい事態になります。



知らぬ間に行われる財産調査

督促状も無視して、支払の意思無しと判断された場合、財産差し押さえの準備が始まってしまいます。
銀行口座のある金融機関や、会社員であれば勤め先などに調査票が送られ、財産について徹底的に調べられます。



忍び寄る黒い影、ついに始まる差し押さえ

財産調査が終わるとついに差し押さえが始まります。
差し押さえが行われる場合、事前に予告書が届きます。

しかし、督促状発行から10日後には差し押さえ可能と法律で定められているため、予告なしにいきなり差し押さえられる場合もあります。

差し押さえの対象となるのは、預金、給与、不動産、車、それ以外にもテレビやパソコンなど換金することが可能なもの全てが当てはまります。(生活に最低限必要なものに関しては差し押さえられることはありません。)

まず真っ先に預金口座が差し押さえられ、延滞税を含め完納するまでは現金の引落しが一切できなくなります




  • 借金より怖い税金の取り立て
イメ-ジ的に税金の滞納はある程度融通が利きそうで、消費者金融などの借金に比べて優先度が低くなりがちです。
しかし、実は他の借金の取り立てよりも住民税の取り立てのほうが恐ろしいんです。



仮に自己破産しても税金の取り立てが終わることはない

差し押さえが行われたからといってそれで終わりではありません。
滞納していた住民税と延滞金が完全に支払われるまで、取り立てが終わることはありません。

借金であれば最悪の場合、自己破産によってチャラにすることができます。
しかし、住民税は行政が相手なので、仮に自己破産したとしても納税の義務が消えることはありません

住民税の延滞に加えて借金の返済があったとしても、住民税の完納をまず優先させましょう。



延滞金が予想外に高利率

住民税の納付期限が過ぎてしまった場合、1日ごとに延滞金が発生していきます。
延滞金の利率は納付期限から1ヶ月を境に大きく上がります。

平成30年度中に納付期限が訪れた場合の利率は、期限翌日~1ヶ月までは年2.6%、1ヶ月経過以降は年8.9%です。

現在でも高い利率ですが、平成25年度以前に納付期限の住民税に対しては年14.6%と凄まじい利率になっていました。

1回分滞納しただけであれば延滞金も大きな金額ではないかもしれませんが、住民税というのは生きていれば常にかかる税金なので、滞納している金額が積もり積もって延滞金が膨れ上がってしまう可能性も十分考えられます。
延滞金の支払いが終わらなければいつまでたっても住民税を完納することはできません。

参考:北区の延滞金利率
https://www.city.kita.tokyo.jp/shunosuishin/kurashi/zekin/jumin/entaikin.html



放置することが一番危険

ここまでご覧いただいて分かる通り、滞納を放置し続けることが何よりも危険です。
忘れていた場合は督促状が届いた時点で納付を必ず行いましょう。

仮にお金が無くて納付することができない場合でも、必ず役所に出向き納税の意思を伝えましょう
病気や失業などやむを得ない理由があれば、差し押さえの猶予や延滞金の分納などが認められることがあります。

逆に、放置して悪質だと判断された場合は、差し押さえから取り立てまでとても厳しく行われることになります。
必ず自分から足を運び、納税の意思を示しましょう。




  • 個人事業主1年目が住民税を延滞しやすい3つの理由
上記をご覧いただき、なんとなく住民税を滞納したらヤバい、ということがお分かり頂けたかと思います。
しかし、ヤバいとは分かっていても、個人事業主1年目は様々な事情が重なり滞納してしまうケ-スが多々あります。



独立開業のための各種手続きが多すぎる

会社を辞めて独立しようとすると、事業の準備はもちろんですが、その他の事務的手続きが非常に多くなります。
事業の開業届、青色申告の申請に始まり、国民年金と国民健康保険への切替え、業種によっては許認可が必要な場合もあります。

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これらの様々な手続きと開業初期の忙しさで、すっかり住民税のことなど忘れてしまいます。
一度に3ヶ月分がまとめて請求されるので忘れずにしっかりと準備しておきましょう。



前年度の所得に対して住民税が課税される

所得税の場合、確定申告や年末調整によって、その年の所得金額から税額を計算し納付を行います。
これに対し、住民税は申告された所得金額をもとに各自治体が計算する、実際に納付を行うのは次年度になります。

つまり、前年の会社員時代の住民税を、個人事業1年目に支払うことになります。
1年目からある程度利益が出ていればそこまで問題になりませんが、利益が出ず準備資金でやりくりしている所に請求が来ると、払いたくても払えないという事態になりかねません。

独立のために資金を準備する際は、住民税などの請求も見越して余分に準備しておきましょう。



相談できる相手がいない

住民税延滞に陥ってしまう一番の理由が、それらのことについてアドバイスをしてくれる人がいないということです。

独立開業して個人事業主になると様々な事務作業と事務手続きが必要になります。
恐らく、得意な人はいません。
みんな嫌いだと思います。

しかし、苦手だからといってやらないで放置しておくと、今回お話した住民税のように恐ろしい事態を招くものばかりです。
1人で大丈夫だと楽観視しすぎると、事業の存続に関わるような大きな失敗を起こしかねません。

個人事業主として独立する際は、独立した先輩や専門家に事前に相談するように心がけましょう。




  • まとめ
いかがだったでしょうか?
文才のせいであまり怖くなかったかもしれませんが、実際に滞納してしまうと幽霊よりよっぽど恐ろしい事態になります。

役所や税務署から届く封筒は、ついつい敬遠しがちですが、届いたらすぐに対処するようにしましょう。


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