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事業目的を決める際に守るべき3つのル-ルと考慮する5つのポイント

会社設立のためには、会社の基本事項というものをいくつか決めなくてはいけません。
前回はそのうちの機関設計(役員構成)についてお話しましたが、今回は基本事項の中でも基本的な「事業目的」についてお話していきます。

一見簡単そうなこの事業目的ですが、意外とル-ルがあったり、見られ方があったりと、実は決めるのも結構苦労します。
事業目的を決める際のポイントや、実際にどのような書き方をするのかいくつか具体例も交えてご紹介していきたいと思います。




  • 事業目的ってなに?
まず、事業目的とはどういったものなのか?決めることで何の意味があるのか?についてお話していきます。


目的に定めていない事業はできない?

事業目的とは、定款の記載項目の1つであり、その会社がなにをして利益を得るのかということを記載します。
簡単に言ってしまえば「なにをしてる会社ですか?」ということです。

定款には「不動産業」と記載してあるのに、実際には「飲食業」をやっているというような、事業目的に定められていない事業を行うことはできませんので注意しましょう。
(違反したからといって罰則はありませんが、取引の信用上問題が起こりやすくなります。)



一度決めた目的を変更するには3万円かかる

決めた事業目的を後になって変更するには、目的変更の登記手続きを行う必要があります。
その際に、最低でも登録免許税の3万円がかかります。

会社の成長に伴って目的を追加する場合などで、変更が必要になることもありますが、最初に適当に決めてしまったために、設立してすぐに変更するケ-スも増えています。
創業当初の3万円は小さい額ではありませんし、手続きにかかる時間も勿体無いです。

目的を決める際は、しっかりと考えたうえで決めるようにしましょう。




  • 事業目的を決める際の守るべき3つのル-ル
事業目的を決める際の注意点として、守るべきル-ルを3つご紹介します。
以下の3つに反するものは、事業目的として記載することはできません。



適法性

法律に則った事業目的でなければ定めることはできません。
「麻薬の販売」、「オレオレ詐欺」、「偽札の製造」など、違法なものを事業目的として定めることはできません。
当たり前ですね。

また、公序良俗に違反する事業目的も定めることはできません。



明確性

第三者から見ても、なんの事業か明らかなものでなければ定めることはできません。
専門用語ではなく、なるべく分かりやすい言葉で表現するように心がけましょう。

また、「サ-ビス業」、「製造業」、「卸売業」とだけ記載した場合、登記はできたとしても、第三者に怪しい会社という印象を与えかねないので、なるべく具体的に記載するようにしましょう。



営利性

会社というのは、商売を通して利益を得ることが目的の法人なので、利益がでないものだけを事業目的に定めることはできません。

利益がでる事業目的の中に、「ボランティア事業」のようなものを入れることは可能ですが、「ボランティア事業」だけを事業目的に定めることはできません。
その場合は、NPO法人などの非営利法人を設立しなければいけません。




  • 事業目的を決める際に考慮する5つのポイント
上記の3つのル-ルに則ったうえで、自分の会社にあった事業目的を定めていきます。
続いては、具体的に事業目的を決めていく際のポイントをご紹介します。



許認可が必要な業種かどうか

「建設業」や「旅行業」のように、業種によっては事業を行うために許認可が必要な場合があります。
許認可を得るためには、該当する許認可にそった事業目的を定める必要があります。
例は以下の通りです。

① 建設業
「土木工事業」、「左官工事業」等、申請する事業に適合した目的を記載しなければいけません。

② 旅行業
「旅行業法に基づく旅行業者代理業」と記載しなければいけません。

③ 介護事業
「介護保険法に基づく居宅サ-ビス事業」、「介護保険法に基づく介護予防サ-ビス事業」等、申請する事業に適合した目的を記載しなければいけません。



将来行う可能性があるものも記載しておく

上記でもお話しましたが、事業目的を後で変更する場合は、別途手続きと費用がかかります。
具体的な展望があれば、将来的に行う可能性がある事業目的も記載しておきましょう。

事業目的は何個記載してもいいのと、事業目的に記載した事業を必ず行わなければいけない訳ではありませんので、想定の範囲のものはできるだけ記載しましょう。



ただ、多すぎると逆に不審

将来的に行う可能性のものも記載するとお話しましたが、事業目的の数が多すぎるとそれはそれで弊害がでてきてしまいます。

大企業などの場合、事業目的の数が20個以上になることもザラですが、創業間もない会社で事業目的の数が多すぎると逆に信用力が下がることがあります。

融資を受けることも考慮すると、多くても10個前後に留めておくことが賢明です。



最後に「前各号に附帯する一切の業務」を入れる

「前各号に附帯する一切の業務」という言葉を事業目的の締めくくりとして入れます。
事業目的についての定型文ですが、記載することで事業目的に直接書かれていないものでも、関連性があれば事業目的として行うことができます。



不安があれば定款認証前に法務局でチェックしてもらおう

決めた事業目的に問題ないか不安がある場合は法務局に行ってチェックしてもらいましょう。
本来であれば、公証人役場で定款の認証を行ったのち、登記の最終段階で法務局に行きます。

しかし、公証人役場では定款の細かいチェックはしてくれません。
認証が終わった後に、法務局で受理されないという事態になると、定款自体を一から作り直さなければいけなくなります。

特に、許認可が必要な業種の場合は下書きの段階で法務局にチェックしてもらうようにしましょう。
その際、定款の下書きの他に印鑑が必要になります。




  • 有名企業の事業目的の事例
それでは最後に、実際に登記されている有名企業の事業目的が、どんな記載のされ方をしているのかご紹介します。


トヨタ自動車の事業目的

1.自動車、産業車両、船舶、航空機、その他の輸送用機器および宇宙機器ならびにその部分品の製造・販売・賃貸・修理

2.産業機械器具その他の一般機械器具およびその部分品の製造・販売・賃貸・修理

3.電気機械器具およびその部分品の製造・販売・賃貸・修理

4.計測機械器具および医療機械器具ならびにその部分品の製造・販売・賃貸・修理

5.セラミック、合成樹脂製品およびその材料の製造・販売

6.建築用部材および住宅関連機器の製造・販売・修理

7.建設工事・土木工事・土地開発・都市開発・地域開発に関する企画・設計・監理・施工・請負

8.不動産の売買・賃貸借・仲介・管理

9.情報処理・情報通信・情報提供に関するサ-ビスおよびソフトウェアの開発・販売・賃貸

10.インタ-ネット等のネットワ-クを利用した商品販売システムの設計、開発およびそのシステムを搭載したコンピュ-タ-の販売、賃貸、修理ならびにそのシステムを利用した通信販売業

11.陸上運送業、海上運送業、航空運送業、荷役業、倉庫業および旅行業

12.印刷業、出版業、広告宣伝業、総合リ-ス業、警備業および労働者派遣業

13.クレジットカ-ド業、証券業、投資顧問業、投資信託委託業その他の金融業

14.駐車場・ショ-ル-ム・教育・医療・スポ-ツ・アリ-ナ・飛行場・飲食・宿泊・売店等の施設運営・管理

15.損害保険代理業および生命保険募集業

16.バイオテクノロジ-による農産物・樹木の生産・加工・販売

17.前各号に関連する用品および礦油の販売

18.前各号に関するエンジニアリング・コンサルティング・発明研究およびその利用

19.前各号に附帯関連するいっさいの業務

https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/index.html


JAL 日本航空株式会社の事業目的

1.定期航空運送事業及び不定期航空運送事業

2.航空機使用事業

3.その他付随する又は関連する一切の事業

https://www.jal.com/ja/


KAO 花王株式会社の事業目的

1.下記の製品の製造及び販売
(1)石けん、シャンプ-、歯磨き及び入浴剤等のパ-ソナルケア製品
(2)クリ-ム、口紅及びファンデ-ション等の化粧品
(3)洗剤、漂白剤、柔軟剤、糊剤及び掃除用具等のハウスホ-ルド製品
(4)生理用品及び紙おむつ等のサニタリ-製品
(5)食品、食品添加物及び飲料
(6)紙類、包装資材、日用雑貨及び衣料品
(7)ペットフ-ド及びペットケア用品
(8)医薬品、医薬部外品、医療機器、動物用医薬品、動物用医薬部外品、農薬、肥料、飼料、試薬品及び化学薬品
(9)油脂、油脂誘導体、界面活性剤、高分子化合物、酸素及び香料等の化学製品
(10)情報電子機器及び家庭用電器製品

2.衛生、美容及び健康に関する情報提供、サ-ビスの実施及び指導並びにそれらの技術者の養成及び施設の経営

3.情報システムの開発及び販売並びに情報処理及び情報通信に関するサ-ビス

4.一般貨物自動車運送業、貨物利用運送業及び倉庫業

5.不動産の売買、賃貸及び管理並びに旅行業

6.研修所及び宿泊施設の運営

7.労働者派遣事業

8.当会社及び当会社関係会社から発生する不用品の処理

9.前各号の事業に附帯する装置、システム及びソフトウェアの設計及び製作並びにその技術の販売及び指導

10.前各号の原料、製品及び副産物の輸出入

11.前各号に附帯または関連する一切の業務

https://www.kao.com/jp/



  • まとめ
いかがだったでしょうか?
実際のものを見てみると、かなり難しい表現で記載されています。
しかし、今ではネットで検索すれば、業種ごとの事業目的の記載例がでてきますので、そういうものを参考にしながら決めていくといいでしょう。

有名企業は、本業以外にも色々な事業目的の記載がありますが、会社設立の際は堅実に具体的な想定の範囲で定めるようにしましょう。



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